この技術革新を、従業員がつよく望んでいる終身雇用を守りながら推進してゆくためにも、従業員が特定の仕事にこだわらないありようが不可欠であった。 この時代に経営が変革しようとした点はむしろ、職務割当てと配置のフレキシビリティの範囲を、作業集団から企業全体にひろげることであったように思われる。
いずれにせよ日本の経営は、このフレキシビリティの価値を発見して、フレキシブルな要請への適応力を核とする能力の開発と発揮に努めるような「ひと」に報いるシステム、職能資格給を選んだのである。 第1期の4点セット大企業を先達として昭和40年代の企業社会に浸透した第1期の日本型能力主義管理は、この職能資格給と、それにくわえてそれとふかい関連をもつ3つの制度や施策からなる。
関連する施策のその一は、職能資格をたとえば社員(1級〜7級)、副主事、主事、副参事、参事というようにグレード(ランク)をつけて区分し、それぞれの職務遂行能力を定義する「新社員制度」である。 グレード名はしばしば古めかしいが、内容は身分序列ではない。
それは戦後労働組合のまた一つの要求であった「工職差別撤廃」を具現した「能力主義的平等」のシステムでもある。 ここでは従業員は、ブルーカラーであれホワイトカラーであれ、「社員」に統合されていて、誰しも職務遂行能力を開発または発揮しさえすれば、さまざまの昇格系統上を管理職にまで経上ることができる。
もっともこの時代にはなお、女性社員は制度的にも昇格が差別されている。 人事考課(査定)である。

査定こそは能力主義管理を実践する手段であって、その日本的な特徴や動向、その改善の方途などについてはこの後にもくりかえし述べる。 ここではただ、「年の功」システム下では影をひそめていた人事考課が復権して近代的なかたちに制度化され、労働省の『雇用管理調査』によれば、1976年にはその実施企業の割合が72%(5000人以上規模では98%)にも達していたことに注目しておきたい。
たとえば新社員制度の下での昇格は、勤続年数が有資格者をきめ、査定が該当者をきめるのである。 また、「本人給」部分の昇給やボーナスの多寡までが人事考課の影響をうけるようにもなった。
その3は、これまた日本の企業社会を特徴づける小集団活動、とりわけQCサークル活動の展開である。 QC活動では、会社の誘導によるものであるにせよ、労働者が「自発的に」サークルをつくって、技能の向上、安全の確保、ムダの排除、製品歩留まり率や設備稼働率の引き上げ、ひいては文字どおりの工数削減・生産性向上などの「改善」に取り組む。

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